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未払い賃金立替払い制度の利用要件とは?

未払い賃金立替払い制度を利用するためには,事業主・使用者に関する要件,労働者・従業員に関する要件,定期賃金・退職金に関する要件,手続的要件など,さまざまな要件を充たしていなければならないとされています。

以下では,未払い賃金立替払い制度を利用するためにはどのような要件が必要となるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士が詳しくご説明いたします。

未払い賃金立替払い制度の要件

会社など法人が倒産した場合,それによって,賃金を支払ってもらえないまま退職を余儀なくされた従業員・労働者を救済するため「未払い賃金立替払い制度」という公的制度が設けられています。

これは,独立行政法人労働者健康安全機構が,倒産した法人に代わって,従業員に対して,未払いの賃金一定の範囲で立替払いするという制度です。

もっとも,この未払い賃金立替払い制度は,会社など法人が倒産した場合にはどのような場合でも利用できるというわけではなく,一定の要件を満たしていなければ利用できません。

未払い賃金立替払制度の利用要件としては,以下のものがあります。

>> 未払い賃金立替払い制度とは?

使用者・事業主に関する要件

どのような使用者・事業主が倒産した場合であっても未払い賃金立替払い制度を利用できるわけではありません。

その倒産した使用者・事業主が,以下の要件を充たす使用者・事業主である場合に限り,未払い賃金立替払制度が利用できるとされています。

  • 事業主が,破産法に基づく破産手続,会社法に基づく特別清算手続,民事再生法に基づく民事再生手続,または,会社更生法に基づく会社更生手続の開始決定を受けたこと,もしくは,事業活動に著しい支障を生じたことにより,労働者に賃金を支払えない状態(事実上の倒産状態)になったことについて労働基準監督署長の認定があったこと
  • 事業主が,労災保険の適用事業者として,1年以上の期間にわたって労働者を使用して事業を行っていたこと

未払い賃金立替払い制度を利用するためには,使用者が,労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業として1年以上事業活動を行っていたことが必要となります。

ただし,労災保険の適用事業であればよく,実際に,その労働者が労災保険に加入していたか,労災保険の保険料を支払っていたのかなどは問われないとされています。

>> 未払い賃金立替払制度の事業主に関する要件とは?

労働者・従業員に関する要件

未払い賃金立替払い制度は,どの労働者でも利用できるわけではありません。一定の要件を充たす労働者でなければ,未払い賃金立替払制度を利用することはできないのです。

労働者に関する要件としては,以下のものがあります。

  • 未払い賃金があったとする期間中に,当該使用者・事業主に雇用され,労働基準法上の労働者として勤務していた者であること
  • 労働者が,使用者たる法人による破産手続開始の申立て,特別清算手続開始の申立て,民事再生手続開始の申立て,会社更生手続開始の申立て,または,事実上の倒産について労働基準監督署長の認定の申請の前6か月前の日から2年間以内に退職した者であること

未払い賃金立替払い制度を利用するためには,その労働者・従業員が,各倒産手続の申立て・労基署長への申請の前6か月から2年の間に退職した者であることが必要となります。

「申立て等前6か月から2年の間に」というのは,申立て等の6か月前から数えて2年間という意味です。したがって,申立て等の7か月前に退職した場合には未払い賃金立替制度は利用できないということになります。

したがって,会社・法人の側とすれば,倒産に伴って,賃金を支払わないまま労働者を解雇または退職してもらったような場合には,遅くとも6か月以内には倒産手続の申立て等をしてあげなければならないということになるでしょう。

なお,この場合の起算点は「申立て」「申請」時です。裁判所による開始決定や労基署長の認定時点ではありません。

>> 未払い賃金立替払制度の労働者に関する要件とは?

定期賃金・退職金に関する要件

未払い賃金立替払いが認められると,独立行政法人労働者健康安全機構から労働者に対して,未払い賃金が支払われることになります。とはいえ,すべての未払い賃金が支払われるわけではありません。

そのため,未払い賃金立替払制度を利用するためには,立替払いが認められる未払い賃金の請求である必要があります。具体的には,以下の要件を充たしていることも必要となります。

  • 請求する賃金が定期賃金・退職金であること
  • 退職日の6か月前から立替払い請求日までの間に支払期日が到来する未払い賃金であること
  • 未払い金額が2万円以上であること

未払い賃金立替払い制度を利用するためには,その未払い賃金の金額が2万円以上であることが必要となります。

未払い賃金額が2万円未満の場合には,残念ながら,未払い賃金立替払い制度を利用することができません。ただし,2万円だけの未払いということは,実際にはそれほど多くないかもしれません。

>> 未払い賃金立替払制度の定期賃金・退職金に関する要件とは?

手続的な要件

未払い賃金立替払制度を利用するためには,前記までの実体的な要件のほかに,以下の手続的要件を充たしていることも必要です。

  • 所定の手続に従って未払い賃金立替払請求をしたこと
  • 破産手続開始日,特別清算手続開始日,再生手続開始日,更生手続開始日または労働基準監督署長による倒産認定日の翌日から2年以内に請求されたものであること

>> 未払い賃金立替払請求手続の流れ

未払い賃金立替払制度の利用要件のまとめ

以上の未払い賃金立替払制度の利用要件をまとめると,未払い賃金立替払制度を利用するためには,以下の要件を充たしていなければならないということになります。

  • 事業主が,破産法に基づく破産手続,会社法に基づく特別清算手続,民事再生法に基づく民事再生手続,または,会社更生法に基づく会社更生手続の開始決定を受けたこと,もしくは,事業活動に著しい支障を生じたことにより,労働者に賃金を支払えない状態(事実上の倒産状態)になったことについて労働基準監督署長の認定があったこと
  • 事業主が,労災保険の適用事業者として,1年以上の期間にわたって労働者を使用して事業を行っていたこと
  • 未払い賃金があったとする期間中に,当該使用者・事業主に雇用され,労働基準法上の労働者として勤務していた者であること
  • 労働者が,使用者たる法人による破産手続開始の申立て,特別清算手続開始の申立て,民事再生手続開始の申立て,会社更生手続開始の申立て,または,事実上の倒産について労働基準監督署長の認定の申請の前6か月前の日から2年間以内に退職した者であること
  • 請求する賃金が定期賃金・退職金であること
  • 退職日の6か月前から立替払い請求日までの間に支払期日が到来する未払い賃金であること
  • 未払い金額が2万円以上であること
  • 所定の手続に従って未払い賃金立替払請求をしたこと
  • 破産手続開始日,特別清算手続開始日,再生手続開始日,更生手続開始日または労働基準監督署長による倒産認定日の翌日から2年以内に請求されたものであること

>> 未払い賃金立替払制度を利用すると何が支払われるのか?

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