未払賃金立替払制度により何を支払ってもらえるのか?
未払賃金立替払制度を利用した場合,独立行政法人労働者健康安全機構により,倒産した法人に代わって,労働者に対して未払いの給付が立替払いされます。ただし,使用者からの給付のすべてを立替払いしてもらえるわけではありません。未払賃金立替払制度によって支払われるのは,退職日の6か月前の日から同制度による立替払い請求の日の前日までの間に支払日が到来している「定期賃金」と「退職金」の8割が原則です。加えて,労働者の退職日現在における年齢によって上限額が定められており,この上限額の8割が限度とされています。
以下では,未払賃金立替払制度により何を支払ってもらえるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士が詳しくご説明いたします。
未払賃金立替払制度による立替払い
会社など法人が倒産したことによって,賃金未払いのまま退職を余儀なくされた労働者・従業員は,一定の要件を満たしていれば「未払賃金立替払制度」を利用することができます。
この未払賃金立替払制度を利用すると,使用者である法人に代わって,独立行政法人労働者健康安全機構から,未払い賃金のうち一定の範囲のものが立替えで支払われることになります。
もっとも,賃金またはその他の給付の全部・全額が支払われるわけではありません。未払賃金立替払制度によって支払われる賃金や給付は,一定の範囲に限定されています。
すなわち,未払賃金立替払制度によって支払われる「賃金」とは,退職日の6か月前の日から同制度による立替払い請求の日の前日までの間に支払日が到来している「定期賃金」と一定額の「退職金・退職手当」です。
また,未払賃金立替払制度によって支払われる金額は,未払いの提起賃金や退職金の全額というわけではありません。金額にも一定の上限が決められています。
なお,未払賃金立替払制度の利用によっても支払われなかった部分は,倒産手続における配当等によって支払われることになります。
>> 未払賃金立替払制度とは?
立替払いされる給付
前記のとおり,未払賃金立替払制度によって立替払いをしてもらえる給付は,未払いの「定期賃金」と「退職金・退職手当」です。
「定期賃金」は,労働基準法上の賃金でなければなりません。
労働基準法上の賃金とは,「賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」です(労働基準法11条)。
そして,未払賃金立替払制度の対象となる定期賃金は,労働基準法上の賃金のうち定期に支払われるもの,すなわち,毎月1回以上,一定の期日を決めて支払われる賃金です(労働基準法24条2項)。
定期賃金として代表的なものは,いわゆる給料・給与です。残業代(時間外割増賃金)・休日手当(法定休日割増賃金)・深夜手当(深夜割増賃金)も,当然,定期賃金に含まれます。
また,「退職金・退職手当」は,就業規則等に支給額や条件等が明示されており,法的に請求が可能なものに限られます。
立替払いされない給付
前記のとおり,未払賃金立替払制度の対象となる定期賃金は,労働基準法上の賃金に該当するものでなければなりません。
労働の対価ではなく,単なる恩給的な給付は,労働基準法上の賃金に該当しません。したがって,恩恵的給付である福利厚生費などは,未払賃金立替払制度における定期賃金に含まれません。
また,実費弁償も,労働者による立替払い金の清算にすぎませんから,賃金に該当しません。したがって,実費支給の通勤手当などは,未払賃金立替払制度における定期賃金に含まれません。
会社など法人の倒産に際して,労働者を解雇した場合,解雇予告手当が発生することがありますが,この解雇予告手当も賃金ではないので,未払賃金立替払制度の対象になりません。
賞与・ボーナスは,就業規則等で支給額等が明記されていれば,賃金に該当すると判断される場合はありますが,仮に賃金に該当すると判断される場合であっても,毎月1回以上支払われる賃金ではないため,未払賃金立替払制度の対象にはなりません。
結婚祝い金や出産祝い金なども,就業規則等で支給額等が明記されていれば,賃金に該当する場合はありますが,これらも,賃金に該当するものであっても,定期に支払われる賃金ではないため,未払い賃金立替払い制度の対象にはなりません。
時期による立替払いの制限
未払賃金立替払制度の対象となる定期賃金・退職手当は,その労働者の退職日の6か月前の日から同制度による立替払い請求の日の前日までの間に支払日が到来しているものに限られます。
この期間外のものは,定期賃金・退職手当であっても,未払い賃金立替払い制度の対象となりません。
立替払いされる金額
前記のとおり,未払い賃金立替払い制度によって支払われるものは,定期賃金と退職手当の未払い分です。しかし,これらに該当する場合でも,その未払い分全額が支払われるわけではありません。
未払い賃金立替払い制度によって支払いがなされる金額は,未払いの定期賃金・退職手当の金額の8割が原則です。
ただし,その労働者の退職日における年齢に応じて,支給金額の上限が定められています。したがって,仮に8割の金額がこの上限額を超えていても,上限額を超えて支給されることはありません。
未払い賃金の金額が上限額を超える場合には,各上限額の8割が支給されることになります。
退職日における年齢ごとの上限額は以下のとおりです。
- 退職日時点の年齢が45歳以上の場合:未払い賃金の金額上限は370万円,立替払いの金額上限は296万円
- 退職日時点の年齢が30歳以上45歳未満の場合:未払い賃金の金額上限は220万円,立替払いの金額上限は176万円
- 退職日時点の年齢が30歳未満の場合:未払い賃金の金額上限は110万円,立替払いの金額上限は88万円
- 上記基準を超える未払い賃金がある場合には,上記年齢ごとの区分に応じた限度額の8割の金額
たとえば,未払い金額が500万円であったとしても,退職時に50歳であった場合には,上限額が370万円ですので,その8割の296万円しか支払われないということになります。
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