経営者保証ガイドラインによる保証債務整理の効果とは?
経営者について,経営者保証に関するガイドライン(経営者保証ガイドライン)による保証債務の整理が成功した場合,一定範囲の財産(残存財産)を残存したまま,保証債務の減額・免除や弁済期限の猶予を受けることが可能となることがあります。主債務者である法人・会社が再建型手続をとっている場合には,その経営に引き続き携わることが可能なこともあります。また,経営者保証ガイドラインによる保証債務整理が成功した場合でも,個人信用情報に事故情報(ブラックリスト)として登録されないこととされています。
以下では,経営者保証ガイドラインによる保証債務整理の効果について,東京 多摩 立川の弁護士が詳しくご説明いたします。
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理の効果
法人・会社が倒産した場合,その法人・会社の債務について代表者・経営者等が連帯保証人になっていると,代表者・経営者は連帯保証債務を支払わなければならない責任を負うことになります。
この保証債務整理の方法の1つとして「経営者保証に関するガイドライン(経営者保証ガイドライン)」を利用するという方法があります。
経営者保証ガイドラインは,経営者保証による弊害を除去することによって,新規の起業,思い切った事業展開,早期の事業再生や清算を促進するために設けられたルールです。
主たる債務者である法人・会社が倒産手続をとる場合も,保証債務を整理するためにこの経営者保証ガイドラインを利用することが可能です。
経営者保証ガイドラインにより保証債務を整理するためには,準則型私的整理手続を行い,対象債権者全員から弁済計画案に対して同意を得ることが必要となります。
弁済計画案の内容にもよりますが,経営者保証ガイドラインによる保証債務整理が成功した場合,以下の効果が認められることがあります。
- 保証債務の減額・免除や弁済期限の猶予(分割払い)
- 一定範囲の資産を処分せずに残存すること
- 引き続き経営に携わることができる場合があること
また,経営者保証ガイドラインによって保証債務を整理した場合には,他の債務整理の場合と異なり,個人信用情報に事故情報(ブラックリスト)として登録されないものとされています。
保証債務の減額・免除・期限の猶予
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理が成功した場合,保証債務を減額・免除または弁済期限を猶予してもらえることがあります(経営者保証ガイドライン7項3号④,⑤)。
具体的には,まず,経営者保証ガイドラインに基づく保証債務整理を対象債権者に申し出た時点(一時停止要請をした場合にはその効力発生時)において保有していた財産をすべて換価処分します(後述の残存資産は除きます。)。
そして,その換価処分によって得られた金銭を,まず,優先権を有する債権者(公租公課の債権者や担保権者等)に対して弁済し,その上で,残余金を各対象債権者に対して債権額に応じて弁済します。
この弁済によっても支払いきれなかった保証債務については,免除をしてもらうことになります。
上記のほか,財産を換価処分するのではなく,弁済期限を猶予してもらって,残存財産を除く財産の「公正な価額」に相当する金額を分割払いにより支払う場合もあります。
公正な価額は,関係者間の合意によって適切な評価基準時を設定し,その期日に処分を行ったと仮定して財産の価額を評価・算定します。
評価の方法も関係者間の合意によって定めることとなりますが,法的倒産手続における財産評定の運用に従うのが通常です。
また,この場合の分割払いの期間は原則5年以内とされています。ただし,関係者間の合意によって,5年を超える期間とすることも可能です。
一定範囲の資産を残存すること
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理が成功した場合,一定範囲の資産・財産を処分せずに「残存資産」として残すことができることがあります(経営者保証ガイドライン7項3号③)。
前記のとおり,保証債務整理をするためには,保有財産を換価処分して得た金額,または,換価処分しないとしてもその保有財産の公正な価額に相当する金額を弁済する必要があります。
しかし,この換価処分しなければならない財産または公正な価額の評価対象となる財産から,一定範囲の財産を除くことができます。要するに,換価処分しなくてもよい財産があるということです。
この処分しなくてもよい財産のことを「残存資産」といいます。
もちろん,対象債権者の同意が必要ですが,以下の財産が残存資産としては認められることがあります。
なお,残存資産そのものとは異なりますが,連帯保証人である代表者や経営者等の個人が,主債務者である法人・会社の事業継続のために必要不可欠な財産を所有していた場合(例えば,本社や工場の不動産など)で,その法人・会社が再建型倒産手続(民事再生・会社更生・再建型私的整理)をとっていたときには,その財産を法人・会社に譲渡することにより,保証債務の返済原資から外すことができます。
経営に引き続き携わることへの許容
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理が成功した場合,主債務者である法人・会社が再建型倒産手続をとっているときには,連帯保証人である経営者は,その法人・会社の経営に引き続き携わることができることもあります(経営者保証ガイドライン7項3号②)。
連帯保証人である経営者が引き続き経営に携われるかどうかは,以下の点を総合的に考慮して,経済的合理性が認められるかどうかによって,対象債権者が判断することになります。
- 主債務者である法人・会社の窮境原因・窮境原因に対する経営者の帰責性
- 経営者・後継予定者の経営資質・信頼性
- 経営者の交代が主債務者である法人・会社の事業の再生計画等に与える影響
- 準則型私的整理手続における対象債権者による金融支援の内容
ブラックリストに登録されないこと
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理の効果そのものではありませんが,経営者保証ガイドラインによる保証債務整理が成功した場合でも,経営者について,個人信用情報における事故情報(いわゆる「ブラックリスト」)に登録されないこととされています(経営者保証ガイドライン8項5号)。
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理以外の方法,例えば,自己破産,個人再生,経営者保証ガイドラインを利用しない任意整理などの債務整理を行った場合,ブラックリストに登録されます。
ブラックリストに登録されると,一定期間,借入れ・クレジットカードの利用・各種ローンの利用などができなくなります。
経営者保証ガイドラインによる保証債務整理の場合には,ブラックリストに登録されないというメリットがあるのです。
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