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法人・会社の破産手続

法人・会社が破産すると理事・取締役は損害賠償責任を負うのか?

法人・会社と理事・取締役などの役員とは委任関係にあり,理事や取締役には経営に関する広汎な裁量権が与えられています。そのため,ただ単に法人・会社を破産させたというだけで,理事や取締役個人が損害賠償責任をおうことにはなりません。ただし,理事・取締役が善管注意義務・忠実義務を怠ったこと(任務懈怠)により法人・会社に損害を与えた場合,理事・取締役は,その法人・会社に対して損害賠償責任を負います(会社法423条,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律101条等)。また,理事・取締役が悪意または重大な過失によって職務執行を怠り(任務懈怠),または,計算書類・会計書類・営業報告書等に虚偽記載をしたことによって第三者が損害を被った場合には,第三者に対して損害賠償を支払わなければならない責任を負うこともあります(会社法429条,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律117条等)。

以下では,法人・会社が破産した場合の理事・取締役の損害賠償責任について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。

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理事・取締役の損害賠償責任

法人・会社と理事・取締役は,法的にみると,委任契約関係類似の関係にあると解されています。理事や取締役は,経営のプロとして法人・会社から経営を委託されている立場にあるのです。

委任契約類似の関係ですから,理事や取締役には,経営に関して裁量権が認められているということです。

経営に失敗し法人・会社が破産に至ったからといって,それだけでその法人・会社や債権者などの第三者に対して損害賠償等の責任を負うことにはなりません。

現実的に考えてみても,経営を失敗したら,理事や取締役個人が常に責任をとらなければならないとすると,個人とは峻別された法人制度を利用した意義が薄れますし,何より誰も理事や取締役にならなくなってしまうでしょう。

そのため,経営や商売が上手くなかったために破産に至ってしまったというだけで,理事・取締役が個人的に損害賠償を請求されることはないのが原則であるということです。

もっとも,どのような場合でも損害賠償責任を負わないということでもありません。裁量権を逸脱しているといえるような悪質なケースでは,代表者・取締役が損害賠償責任を負うこともあり得るでしょう。

>> 法人・会社が破産すると理事・取締役は法的責任を負うのか?

法人・会社に対する損害賠償責任

法人の理事や会社の取締役などの役員は,その法人・会社に対して,忠実義務や善管注意義務という法的義務を課されています。

善管注意義務は,委任契約における受任者が負う一般的な義務です。すなわち,善管注意義務とは,委任契約における受任者として善良な管理者の注意をもって業務執行をしなければならないという法的義務です。

前記のとおり,法人・会社と理事・取締役の関係は委任契約関係ですので,経営の受任者である理事・取締役は,法人・会社に対して善管注意義務を負っています。

この善管注意義務を法人・会社の理事や取締役の法的義務として具体化したものが忠実義務です。忠実義務とは,会社のために忠実に職務を遂行しなければならないという法的義務です。

両者は同質の義務で,実務的にいえばほとんど同一のものとして扱われているといってよいでしょう。

いずれにしても,これら善管注意義務・忠実義務を怠ったこと(任務懈怠)により法人・会社に損害を与えた場合,理事・取締役は,その法人・会社に対して損害賠償責任を負うことになります(会社法423条,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律101条等)。

法人・会社の理事や取締役に対する損害賠償請求権は,法人・会社が破産すると破産財団に属する財産として扱われることになります。

したがって,法人・会社が破産した場合,破産管財人によって損害賠償請求権が行使されます。つまり,理事や取締役は,破産管財人から損害賠償を請求されるということです。

理事や取締役が破産管財人に対して損害賠償をした場合,支払われた損害賠償金は破産財団に組み入れられ,各債権者への配当または弁済に充てられることになります。

会社に対する損害賠償責任を負う場合

前記のとおり,理事や取締役には経営に関する広汎な裁量権が認められています。単に経営に失敗して,会社が破産してしまったというだけでは損害賠償責任を負うことにはなりません。

破産法人の理事や破産会社の取締役が,法人・会社に対して損害賠償義務を負担することになるのは,理事や取締役に与えられた裁量権を逸脱するような善管注意義務・忠実義務違反がある場合に限られます。

たとえば,会社財産を私的に流用している場合や,回収の見込みがないことが明らかな債権を,それを知りながら買い取っているような場合などには,それを決断し実行した代表理事や代表取締役が,会社に対して損害賠償責任を負うことがあり得るでしょう。

また,代表者でない一般の理事や取締役であっても,上記のような代表者の行為を知りつつ,理事会や取締役会で賛成の議決をした場合には,代表者とともに損害賠償責任を負う場合があります。

役員責任査定制度

理事や取締役に対する損害賠償請求は,訴訟によって請求するのが一般的です。しかし,訴訟ですと,非常に時間がかかり,破産手続の迅速性を害するおそれがあります。

そこで,破産手続においては,理事や取締役など役員の法人・会社に対する損害賠償責任の有無や損害額を簡易迅速に決めるために,役員責任査定制度が設けています。

ただし,この査定制度における決定に対しては,役員責任査定の決定書送達の日から1か月以内であれば異議の訴えをすることができます。

異議の訴えが提起された場合には,破産裁判所ではなく,通常の訴訟を担当する裁判所において訴訟手続が行われます。

実務的には,東京地裁においても,ここ9年間でわずか50件程度であるとのことですので,それほど多く用いられている制度ではありません。

債権者など第三者に対する損害賠償責任

前記のとおり,理事や取締役などの役員は,法人・会社に対して善管注意義務・忠実義務を負っており,それに違反した場合には,会社に対して損害賠償責任を負うことがあります。

また,それだけでなく,債権者などの第三者に対しても損害賠償責任を負うことがあります。

法人破産・会社破産の場合には,やはり債権者に対する責任が最も多いでしょう。

法人・会社が破産するのですから,債権者は満足な債権の回収ができなくなります。そのため,債権者による取締役への厳しい責任追求がなされることがあるのです。

第三者に対して損害賠償責任を負う場合

前記のとおり,理事や取締役には経営に関して広汎な裁量権が認められています。また,債権者の損失填補は,破産手続内における配当等によって公平になされるべきであるのがそもそもの破産法の趣旨です。

そのため,単に会社を破産させたというだけで,理事や取締役個人が,債権者など第三者に対して損害賠償責任を負うものではありません。

ただし,理事や取締役が悪意または重大な過失によって職務執行を怠り(任務懈怠),または,計算書類・会計書類・営業報告書等に虚偽記載をしたことによって,第三者が損害を被った場合には,その第三者に対して損害賠償を支払わなければならない責任を負うものとされています(会社法429条,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律117条等)。

例えば,理事や取締役が,法人・会社が倒産状態に陥ることを認識しながら(または少し調査をしたり考えたりすれば,容易に認識できたにもかかわらず,それせずに),法人・会社の財産を使い込んでしまったために,法人・会社が破産してしまったような場合が考えられます。

なお,法人・会社の損害賠償請求権と第三者の損害賠償請求権が競合する場合,債権者間での早い者勝ちを防止して債権者間の公平を図るため,破産管財人による法人・会社の損害賠償請求権の行使を優先すべきであるとの見解があります。

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