破産手続が開始されると他の手続はどうなるのか?
破産手続開始時点ですでに破産債権・財団債権に関して継続している訴訟は中断し,破産手続開始時点ですでに行われている強制執行や民事保全処分は効力を失います。破産債権・財団債権に関して破産手続開始後に訴訟を提起し,強制執行や民事保全処分を行うことはできなくなります。国税滞納処分も破産手続開始後は新たに行うことはできなくなりますが,破産手続開始時点ですでに行われている国税滞納処分は手続が継続されます。
以下では,破産手続が開始されると他の手続はどうなるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
破産手続と他の手続
破産手続が開始される以前に,破産者と債権者や第三者との間で紛争が生じ,訴訟手続,民事保全手続,民事執行手続が係属していたり,税務署による滞納処分手続が開始されていることもあるでしょう。
場合によっては,破産手続が開始される以前に,すでに民事再生などの他の倒産手続が申し立てられているということもあり得ます。
破産手続と他の裁判手続は,どれも裁判所において行われるとはいえ,まったく別の手続です。滞納処分は行政による手続ですから,当然,破産手続とは別の手続です。
したがって,破産手続が開始されたとしても,これらの破産以外の手続が当然に終了するわけではなく,別の手続は別の手続でそれぞれ別個に継続していくのが原則です。
もっとも,破産手続が開始されると,破産者の財産は破産管財人によって換価処分されて,破産手続において確定された破産債権に対して配当され,当該破産者である法人・会社は清算されて消滅することになりますから,他の手続が進行していると,破産手続による清算に支障をきたすおそれがあります。
そこで,破産法では,他の手続との調整を図るための定めが設けられています。
訴訟手続の扱い
最も典型的な裁判手続というと「訴訟」でしょう。破産手続開始前にすでに訴訟が係属していることもありますし,破産手続開始後に訴訟が新たに提起されることもあります。
訴訟において判決が確定するなどすれば,破産手続にも大きな影響を及ぼす場合があり得ますので,破産法は,訴訟手続の取扱いについて特別の規定を設けています。
>> 破産手続が開始されると訴訟手続はどのように扱われるのか?
破産手続開始時において係属中の訴訟
破産手続開始時点ですでに,破産者に対して訴えが提起されている場合または破産者が訴えを提起している場合,その破産者を当事者とする訴訟のうち「破産財団に関する訴訟手続」は中断します(破産法44条1項)。
この「破産財団に関する訴訟手続」には,破産財団に属する財産・資産に関する訴訟だけでなく,消極財産としての破産債権や財団債権に関する訴訟も含まれると解されています。
中断した訴訟は,破産債権に関するものを除いて,破産管財人が受継することができます。破産管財人が受継しない場合,相手方は,受継を申し立てることができます(破産法44条2項)。
他方,破産財団に関する訴訟手続以外の訴訟手続は,破産手続の開始によっても中断されません。したがって,破産手続と並行して手続が進んでいくことになります。
破産手続開始後に提起される訴訟
破産手続開始時点ですでに訴訟が係属している場合のほか,破産手続開始後に訴訟が提起されることもあります。
破産手続が開始されると破産債権者による個別の権利行使が制限されることになりますので,破産手続開始後は,破産債権者は破産者に対して破産債権に関する訴訟を提起することはできなくなります(破産法100条1項)。
もっとも,破産手続開始後に訴訟提起されることがないわけではありません。破産管財人による破産財団回収のための訴訟や否認権行使の訴訟,第三者による破産財団に関する訴訟,債権者等による役員責任追及のための損害賠償請求訴訟,破産債権確定訴訟などが適されることがあります。
これらの訴訟については,破産管財人が自ら訴訟を提起する場合はもちろん,それ以外の訴訟についても破産管財人が訴訟の当事者として訴訟を追行することになります。
民事執行手続の扱い
破産法 第42条 第1項
第1項 破産手続開始の決定があった場合には,破産財団に属する財産に対する強制執行,仮差押え,仮処分,一般の先取特権の実行,企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で,破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは,することができない。
第2項 前項に規定する場合には,同項に規定する強制執行,仮差押え,仮処分,一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で,破産財団に属する財産に対して既にされているものは,破産財団に対してはその効力を失う。ただし,同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については,破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
破産手続開始時点において,すでに破産財団に属する財産に対して強制執行がなされている場合があります。これを維持しておくと,破産手続に影響を及ぼすおそれがあり得ます。
そのため,破産手続が開始されると,破産債権や財団債権に基づく強制執行は効力を失います(破産法42条2項前段)。
ただし,破産管財人が必要と認める場合には,破産手続開始時点ですでになされている強制執行を失効させず,手続を続行させることもできます(破産法42条2項後段)。
また,破産手続開始後は,破産債権や財団債権に基づく強制執行をすることもできなくなります(破産法42条1項)。
他方,債権者が別除権を行使して破産手続外で担保権を実行する場合については,破産手続の開始によっても効力を失わず,破産手続開始後も担保権実行を行うことができます(破産法65条1項)。
民事保全手続の扱い
前記強制執行の場合と同じく,破産財団に対して仮差押えや仮処分などの民事保全処分が行われていると,破産手続に影響を及ぼすおそれがあります。
そこで,破産手続開始によって破産債権・財団債権に基づく民事保全処分は効力を失い(破産法42条2項前段),破産手続開始後は破産債権・財団債権に基づく民事保全処分を行うことができなくなるとされています(破産法42条1項)。
ただし,破産管財人が必要と認める場合には,破産手続開始時点ですでになされている民事保全処分を失効させず,手続を続行させることもできます(破産法42条2項後段)。
滞納処分の扱い
国税を滞納している場合,課税庁によって破産債権・財団債権に基づく国税滞納処分が行われている場合があります。
破産債権・財団債権に基づく国税滞納処分も,強制執行手続や民事保全処分と同様,破産手続開始後に新たに行うことはできません(破産法42条1項)。
もっとも,破産手続開始時点ですでに破産債権・財団債権に基づく国税滞納処分がなされている場合,その国税滞納処分の効力は失われません。
ただし,単に国税滞納処分が決定されているだけでは足りず,実際に,破産手続開始前に滞納処分としての差押えまたは参加差押えがされていることが必要とされています。
破産以外の倒産手続の扱い
破産手続が開始される前に,先行して,特別清算,民事再生,会社更生といった破産手続以外の倒産手続が開始されていることがあります。
特別清算手続が開始されていても,債権者との協定見込みがない場合,債権者の一般の利益に反する場合,協定が否決された場合や協定が不認可とされた場合などには,裁判所は,職権で破産手続開始決定をすることができ,それによって特別清算手続は終結します(会社法574条)。
民事再生手続においては,再生手続開始申立ての棄却,再生手続廃止などによって再生手続が目的を達せずに終了した場合,裁判所は,職権で破産手続開始決定をすることができるとされています(民事再生法250条1項)。
会社更生法においても,民事再生手続と同様,更生手続開始申立ての棄却,更生手続廃止などによって再生手続が目的を達せずに終了した場合,裁判所は,職権で破産手続開始決定をすることができるとされています(会社更生法252条)。
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