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法人・会社の破産手続

法人破産前に親しい取引先にだけ支払いしてもよいか?

会社・法人を破産させる前に,親しい取引先等にだけ支払いをしてしまうと,偏頗弁済となり,破産管財人による否認権行使の対象となります。また,場合によっては,特定債権者に対する債務消滅行為として破産犯罪となり,刑罰を科されることもあり得ます。親しい取引先にだけ支払いをしてしまうことは厳に慎むべきでしょう。

以下では,法人・会社が破産する前に親しい取引先にだけ支払いをしてもよいのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。

親しい取引先への支払い

会社・法人の破産について,よくあるご質問に,破産手続をとる前に,親しい取引先にだけ支払いを済ませてしまいたいというご質問をおうかがいすることが少なくありません。

経営者・代表者の方とすれば,これまでお世話になってきた取引先にだけは何とか支払いをしておきたいということでしょう。その心情は分かります。

しかし,結論から言えば,会社・法人破産の前に,親しい取引先にだけ支払いをしてしまうことはやめておいた方がよいでしょう。

上記のように一部の債権者にだけ支払いをする行為は,破産法上,最も禁止されるべき行為の1つとされており,破産管財人による否認権行使の対象となるばかりか,破産犯罪として処罰の対象となることさえあるからです。

実際,裁判所においても最も注意すべき点とされており,破産管財人に対して,親しい取引先などに対してだけ支払いをしてしまう行為がないかをまず確認するように求めているくらいです。

否認権の行使の対象となる可能性

破産手続開始の前に,他の債権者には支払いをしないで,親しい取引先等に対してだけ支払いを済ませてしまうことは,偏頗弁済として,破産管財人による否認権行使の対象となることがあります。

破産管財人の否認権には,偏頗行為否認と呼ばれる類型があります。親しい取引先にだけ支払いをしてしまうことは,この偏頗行為否認の対象となることがあるのです。

具体的には,支払不能に陥った後または破産手続開始の申立てをした後の取引先への支払いは,破産法162条1項1号によって否認されることになります。

また,その偏頗弁済が,支払義務がなく,または支払期限が到来していないにもかかわらずなされたものである場合には,破産法162条1項2号によって,支払不能・破産手続開始申立て後のものに限らず,支払不能前30日以内のものも否認権行使の対象となります。

偏頗行為否認が行使されると,破産管財人は,支払いをした取引先との弁済行為等の効力を否定して,その取引先に対して,支払った金額を返還するよう請求することになります。

その結果,取引先の方は,破産管財人と訴訟等によって争わなければならなくなり,否認権行使が認められれば,いったんは取得した金銭を破産管財人に返還しなければならなくなります。

つまり,親しい取引先にだけ支払いをして義理を果たしたにもかからず,かえって,その取引先に迷惑をかけてしまうことになりかねないのです。

>> 偏頗行為否認とは?

破産犯罪として処罰される可能性

前記のとおり,会社・法人破産の前に,親しい取引先にだけ支払いをしてしまう行為は,破産管財人による否認権行使の対象となりますが,それだけでは済まない場合があります。

すなわち,他の債権者に対しては支払いをせずに親しい取引先にだけ支払いをしてしまう行為は,特定の債権者に対する担保供与等の罪として,破産犯罪が成立し,刑罰に問われる可能性があるのです。

特定の債権者に対する担保供与等の罪とは,債権者を害する目的で,債務者が,特定の債権者に対する債務について債務者の義務に属せず又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しない担保を供与しまたは債務を消滅させる行為を処罰する犯罪類型です(破産法266条)。

親しい取引先にだけ支払いをする行為が,他の債権者を害する目的があり,しかも,支払義務がなく,または支払期限が到来していないにもかかわらずなされたものである場合には,この特定の債権者に対する担保供与等の罪に該当することになります。

特定の債権者に対する担保供与等の罪に該当する場合,その行為者は,破産手続開始決定が確定すると,当該債務者は,1月以上5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられ,場合によっては,この両方を併科されることもあります。

破産犯罪も言うまでもなく犯罪の1つです。このような犯罪によって刑罰を科されてしまえば,せっかく破産手続をとって人生をやり直すスタートを切ろうというのに,経済的更生がより困難となるおそれがあります。

その点からしても,親しい取引先にだけ支払いをしてしまうということは,やめておくべきなのです。

>> 特定の債権者に対する担保供与等の罪とは?

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