法人・会社の破産申立書に添付する疎明資料とは?
実務では,破産手続開始の申立書やその添付書類に,それらに記載されている事実を裏付けるための疎明資料も添付するのが通常です。疎明とは,ある事実の存否について,裁判官に一応確からしいという心証を抱かせること,またはそのためにする当事者の挙証活動のことをいいます。そして,疎明するための証拠を疎明資料といいます。
以下では,法人・会社の破産申立書に添付する疎明資料について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
- 破産手続開始申立書に添付する疎明資料
- 負債・債務に関する疎明資料
- 資産・財産に関する疎明資料
- 契約関係に関する疎明資料
- 従業員に関する疎明資料
- 事業に関する各種許可等がある場合の疎明資料
- 訴訟等他の手続が係属している場合の疎明資料
- その他の疎明資料
破産手続開始申立書の疎明資料
裁判所に破産手続を開始してもらうためには,破産申立権者が管轄の裁判所に対して,破産手続開始の申立書を提出する方式によって破産手続開始の申立てをしなければなりません。
とはいえ,ただ破産手続開始の申立書を提出すればよいというものでもありません。破産手続開始の申立書には,さまざまな書類を添付する必要があります。
添付することが必須とされている書類は,債権者一覧表(破産法20条2項),法人・会社の登記事項証明書,財産目録,破産手続開始の申立ての日の直近において法令の規定に基づき作成された債務者の貸借対照表・損益計算書ですが(破産規則14条3項),これら以外にも,取締役会の議事録や報告書などの添付も必要です。
さらに,破産手続開始の申立書には,破産手続開始原因となる事実があることや添付書類に記載されている事実があることを裏付けるための「疎明資料」も添付するのが通常です。
疎明とは,ある事実の存否について,裁判官に一応確からしいという心証を抱かせること,またはそのためにする当事者の挙証活動のことをいいます。そして,疎明するための証拠を疎明資料といいます。
負債・債務に関する疎明資料
そもそも負債・債務がなければ破産手続が開始されることはありません。負債があっても,それがどのくらいのどのような債務なのかが分からなければ,破産手続開始原因があるかどうかを判断することができません。
また,債務者である法人・会社に対して債権を有する債権者は,破産手続の最も重大な利害関係人ですから,手続参加の機会を与えるために,裁判所においても,どのような債権者がいるのかを把握しておく必要があります。
そこで,破産手続開始の申立書には,債権者一覧表を添付しなければならないとされています。
この債権者一覧表に記載した債権があることについての疎明資料としては,契約書,債権者からの請求書,領収書,買掛の帳簿などがあります。
もっとも,すべての債権について疎明資料を破産手続開始の申立書に添付するとあまりに膨大な量になってしまうことがあるため,申立書に債権の疎明資料を全部添付することはしないのが一般的でしょう。
ただし,破産手続開始の申立書に添付しないからといって,債権の疎明資料が不要となるわけではありません。破産手続開始後に破産管財人が債権調査を行う際に提出を求められることがあります。
したがって,破産手続開始の申立書に添付しないとしても,保管をしておく必要があります。
資産・財産に関する疎明資料
債務者である法人・会社にどのくらいの資産・財産があるのかは,破産手続開始の要件や予納金の金額をいくらにするかなどの判断に関わってきます。
また,破産手続が開始されると,債務者である法人・会社の財産の管理処分権は破産管財人に属することになり,破産管財人がその財産を換価処分して各債権者に弁済または配当することになります。
したがって,破産管財業務の見込みを立てるためにも,どのような財産があるのかを把握しておくことは重要です。
そこで,破産手続開始の申立書には,債務者の財産を記載した財産目録を添付しなければならないとされています。
そして,この財産目録に記載した財産に関する疎明資料も一緒に,破産手続開始の申立書に添付することになります。
法人・会社の資産・財産にはさまざまなものがあるので一概には言えませんが,一般的には以下のような疎明資料を添付することになるでしょう。
- 財産全般:決算書・固定資産台帳・勘定科目の明細書など
- 現金がある場合:現金出納帳など
- 預貯金がある場合:預貯金通帳など
- 売掛金がある場合:契約書,見積書,請求書など
- 貸付金がある場合:契約書,見積書,請求書など
- 出資金がある場合:出資証券など
- 不動産がある場合:不動産登記,査定書など
- 在庫品・原材料がある場合:決算書,在庫等台帳,現場写真,購入の際の契約書など
- 機械・工具類がある場合:決算書,固定資産台帳,現場写真,購入の際の契約書など
- 什器備品がある場合:決算書,固定資産台帳,現場写真,購入の際の契約書など
- 自動車・運搬具がある場合:自動車検査証,登録証,決算書,固定資産台帳など
- 電話加入権がある場合:契約書など
- 受取手形・小切手がある場合:手形,小切手
- 上記以外の有価証券がある場合:有価証券
- 賃貸保証金・敷金がある場合:契約書など
- 事業保証金・積立金がある場合:契約書など
- 保険がある場合:保険証券,解約返戻金証明書
- 知的財産権がある場合:登録証など
契約関係に関する疎明資料
破産手続が開始された後,法人・会社を清算するために,法人・会社が締結している各種の契約関係も解消しておかなければなりません。また,各種の契約関係は,負債や資産にも関わってきます。
そこで,破産手続開始の申立書には,各種の契約関係の状況を記載した報告書等を添付するのが通常です。
そして,この報告書に記載した契約関係に関する疎明資料も一緒に,破産手続開始の申立書に添付することになります。疎明資料としては,やはり契約書またはそれに類する書面ということになるでしょう。
この契約関係には,顧客や取引先との契約だけでなく,家賃・地代・賃料,水道光熱費,通信費,広告費,リース料金などの経費に関するものも含まれます。
特に仕掛中の業務がある場合には,その契約内容がどのようなものであるのかは非常に重要な問題となりますので,契約書等の添付は必須と言ってよいでしょう。
従業員に関する疎明資料
従業員は,法人・会社の破産手続において重要な利害関係人です。特に,従業員に対して未払いの給料・退職金等がある場合には,その従業員は債権者にもなりますから,従業員に関する疎明資料も添付すべきです。
具体的には,従業員との間の雇用契約書,就業規則,退職金規程,従業員名簿,賃金台帳,給与明細などが必要となってきます。
破産手続開始前にすでに従業員を解雇している場合には,解雇通知書,解雇理由通知書なども必要となってくるでしょう。
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事業に関する各種許可等がある場合の疎明資料
法人・会社が事業を行うにあたって,官公庁から,各種の免許・登録・認可・許可を受けている場合があります。
この場合,裁判所書記官は,破産手続開始後に,その官公庁に対して,当該法人・会社について破産手続が開始されたことを通知しなければならないとされています。
したがって,裁判所においては,債務者である法人・会社についてどのような許可等がされているのかをあらかじめ把握しておく必要があります。
そこで,法人・会社が事業に関して免許・認可・許可・登録をしている場合には,その免許証,認可証,許可証,登録証などを破産手続開始の申立書に添付する必要があります。
訴訟等他の手続が係属している場合の疎明資料
債務者である法人・会社について破産手続開始を申し立てる際に,すでに訴訟などの破産手続以外の法的手続が係属していることがあります。
例えば,当該法人・会社に対して訴訟等が提起されていることもありますし,逆に,当該法人・会社が第三者等に訴訟等を提起していることもあるでしょう。
また,訴訟等でなくても,強制執行や税金の滞納処分の手続をとられている,または強制執行等を行っている場合もあり得ます。
さらに,破産手続開始申立ての時点で,当該法人・会社が破産手続以外の倒産手続を行っていることもあります。
破産手続以外の手続がとられているかどうかは,破産手続開始の要件を充たしているかどうかに関わりますし,また,要件を充たしているとしても破産手続開始の申立ての管轄裁判所はどこになるのか等にも関わってきます。
そのため,破産手続開始の申立書には,法人・会社について係属している訴訟などの手続に関する疎明資料を添付するのが一般的です。
例えば,訴訟が係属しているのであれば,裁判所から送付された書類や訴状などを,滞納処分がされているのであれば,公租公課庁から送付された書類を,すでに債務名義があるのであれば,その判決書などの債務名義を添付することになります。
その他の疎明資料
疎明資料は,上記のものに限られるわけではありません。事案に応じて必要となる資料は異なります。
例えば,破産に至った事情について特に資料を添付して説明する必要があるような場合には,その疎明資料を添付することになります。
また,破産手続開始後に,裁判所や破産管財人から追加で資料の提出を求められることもあります。
破産手続開始の申立書に添付しなかったからといって,それ以外の資料が不要となるわけではありませんので,処分してしまわないように注意しておく必要があります。
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