会社の自己破産申立て前の資産・財産の調査とは?
債務者である法人・会社の資産・財産は,破産手続開始後,破産管財人によって換価処分され,それによって得られた金銭は,破産手続を遂行するための費用として用いられ,また,各債権者に対する弁済または配当の原資になります。したがって,支払不能・債務超過に陥った後は,法人・会社の資産・財産を調査した上で,できる限り流出・散逸しないように保全しておく必要があります。
以下では,法人・会社の破産申立て前の資産・財産の調査について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
資産・財産の調査の必要性
破産手続が開始されると,債務者である法人・会社が有していた資産・財産の管理処分権は裁判所によって選任される破産管財人に移行し,その破産管財人が当該資産・財産を調査・管理して最終的に換価処分します。
破産管財人は,資産・財産を換価処分して得た金銭を使って破産手続の遂行に必要となる費用を支出し,さらに余剰があれば,各債権者に弁済または配当します。
つまり,法人・会社の資産・財産は,破産手続遂行のための費用となるとともに,債権者に対する弁済または配当の原資となるのです。
そのため,支払不能・債務超過となり又は支払いを停止した以降は,法人・会社の資産・財産はできる限り流出・散逸しないように保全して,破産手続が開始して破産管財人が選任されたら,その破産管財人にそのまま引き継げるように準備をしておく必要があります。
仮に,破産手続開始の申立て前に,合理的な理由なく資産・財産を処分してしまうと,破産手続開始後に,破産管財人の否認権行使がなされたり,場合によっては,資産・財産を処分してしまった人に対して損害賠償責任や刑事責任の追求がなされることもあります。
破産管財人に確実に法人・会社の資産・財産を引き継げるよう,破産申立ての前に,資産・財産をできる限り調査しておく必要があります。
>> 法人・会社の破産手続開始の申立て前にはどのような準備が必要か?
資産・財産の種類
調査が必要となる資産・財産は,原則として,換価価値のあるものです。
ただし,換価価値のないと思われるものであっても,処分するのに費用がかかるものもありますし,破産管財人の調査によっては換価価値があると判断されるものもありますので,換価価値の有無にかかわらず,ひととおりの財産を調査しておく必要があります。
自分勝手に「換価価値なし」と判断して,調査の対象から外してしまうのはやめておいた方がよいでしょう。
また,自社内に保管しておらず,他社に預けてあるような資産・財産が存在することもあります。それらも調査しておく必要があります。
逆に,自社内に置いてあるものの,借りている物,リースしている物,預かっている物であって法人・会社の所有物ではないというものもあるでしょう。
それらを誤って処分してしまうと第三者に迷惑をかけることになりますから,そのような物がないかどうかも確認しておく必要があります。
調査すべき資産・財産は,「物」に限りません。形のない債権や権利も調査の対象になります。
調査が必要となる資産・財産としてよくあるものとしては,以下のものがあります(以下のものに限られるわけではありません。あくまで例示です。)。
- 現金
- 預貯金
- 不動産(所有権・借地権)
- 自動車・バイク
- 事業設備・事業機械
- 各種備品・什器・工具
- 在庫品
- 売掛金・貸金
- 積立金
- 事業保証金・取引保証金
- 敷金・賃貸借保証金
- 出資金
- 保険
- 株式・社債・国債
- 手形・小切手
- 会員権(ゴルフ会員権・リゾート会員権など)
- 知的財産権
資産・財産の調査方法
どのような資産・財産があるのかは,まず,法人・会社の代表者・役員・従業員などの関係者から聴取して調査します。その上で,各種書類と照らし合わせて,できる限り漏れのないように調査する必要があります。
調査する書類としては,以下のものが挙げられます。
- 決算書類
- 各種帳簿
- 通帳
- 郵便物
決算書,固定資産台帳や帳簿類にすべての資産・財産が記載されているとは限りません。通帳の記載や郵便物などもチェックして,他に資産・財産がないかを確認する必要があります。
古い物はすでに減価償却期間も終わっており決算書類等に記載がないことも少なくないため,事業所・工場・倉庫など現地に行って直接確認することもあります。
調査する事項は,財産の種類,名称,個数だけではなく,可能であれば,査定をとって換価価値も調査します。
ただし,緊急で破産申立てを行わなければならないような場合には,すべてを正確に調査している時間がないこともあります。
そのような場合でも,決算書類に記載のあるような主要な財産については調査をしておくのが望ましいでしょう。
資産・財産の保全
前記のとおり,破産申立てを行うことを決めたならば,法人・会社の資産・財産は,できる限り散逸してしまわないように,破産管財人に引き継ぐまで注意して保全しておく必要があります。
合理的な理由なく法人・会社の資産・財産を処分してしまうと,破産管財人による否認権行使がなされたり,場合によっては,財産散逸防止義務違反による損害賠償請求や刑事罰を受けるおそれもあります。
また,破産申立てを予定していることを知った債権者が,事業所内等にある物品などを持ち出してしまうようなこともあります。
したがって,法人・会社の資産・財産は厳重に管理して保全しておかなければなりません。
財産散逸の危険がある場合には,できる限りすみやかに準備をして,急いで破産申立てをするのが無難でしょう。
>> 法人・会社の破産申立て前に資産・財産を処分してもよいか?
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