監督官庁による破産手続開始の申立てとは?
法人・会社の破産手続における破産手続開始の申立権者は,債権者・債務者・準債務者(法人の理事・会社の取締役など)ですが,金融機関など特殊な法人についてはその監督官庁が破産申立権者となる場合があります。
以下では,監督官庁による破産手続開始の申立てについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
破産手続開始の申立権者
破産手続は,裁判所の破産手続開始決定によって開始されます(破産法30条1項)が,裁判所に破産手続開始決定を出してもらうためには,破産手続開始の申立てをしなければなりません。
ただし,破産手続開始を申し立てることができるのは,破産法上,一定の立場にある者限られています。この破産手続開始申立てをすることができる者のことを「破産申立権者」と呼んでいます。
破産申立権者として認められるのは,債権者,債務者および準債務者(法人の理事や会社の取締役等)です。それ以外の人は,原則として,破産手続開始の申立てをすることができません。
もっとも,例外があります。それが監督官庁による破産手続開始の申立てです。
監督官庁による申立てがなされる場合
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律 第490条
第1項 監督庁は,金融機関,外国銀行支店に係る外国銀行,銀行持株会社,長期信用銀行持株会社,信用金庫連合会,信用協同組合連合会,労働金庫連合会,金融商品取引業者(金融商品取引法第2条第9項に規定する金融商品取引業者をいう。),指定親会社,保険会社,保険持株会社及び少額短期保険業者(以下この節において「金融機関等」という。)に破産手続開始の原因となる事実があるときは,破産手続開始の申立てをすることができる。
第2項 第377条第2項の規定は監督庁が前項の規定によりする金融機関,外国銀行支店に係る外国銀行,銀行持株会社,長期信用銀行持株会社,信用金庫連合会,信用協同組合連合会及び労働金庫連合会の破産手続開始の申立てについて,同条第3項の規定は監督庁が前項の規定によりする金融商品取引業者及び指定親会社の破産手続開始の申立てについて,同条第4項の規定は監督庁が前項の規定によりする保険会社,保険持株会社及び少額短期保険業者の破産手続開始の申立てについて,それぞれ準用する。
第3項 第1項の規定により監督庁が破産手続開始の申立てをするときは,破産法第20条第2項及び第23条第1項前段の規定は、適用しない。
農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律 第29条
第1項 監督庁は,農水産業協同組合に破産手続開始の原因となる事実があるときは,裁判所に対し,破産手続開始の申立てをすることができる。
第2項 第3条第2項の規定は,農林水産大臣及び内閣総理大臣が前項の規定によりする農水産業協同組合の破産手続開始の申立てについて準用する。
第3項 第1項の規定により監督庁が破産手続開始の申立てをするときは,破産法(平成16年法律第75号)第20条第2項及び第23条第1項前段の規定は,適用しない。
前記のとおり,例外的に,債権者・債務者・準債務者以外に破産申立権者として認められるものとして,監督官庁があります。
といっても,あらゆる監督官庁に破産手続開始の申立権が認められるわけではありません。
監督官庁に破産手続開始の申立権が認められるのは,金融機関等の更生手続の特例等に関する法律490条1項や農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律29条1項に基づく場合など非常に限定された場合だけに限られます。
したがって,一般の法人や会社が,監督官庁による破産手続開始の申立てをされるということはありません。
また,仮に上記のような特別の規定がある法人・団体であっても,監督官庁が積極的に破産申立てを行うようでは,公権力によって債務者による経済的な再建を妨げてしまうおそれがあります。
そこで,監督官庁が破産申立てを行うのは,多数の被害者が生じているなど看過できないほどに明白な法令違反があるような特殊な事情がある場合に限られるでしょう。
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