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詐害行為否認とは?

破産管財人による否認権の類型の1つに「詐害行為否認」があります。詐害行為否認とは,破産者による破産債権者を害する行為の効力を否定して,破産財団から流出した財産を破産財団に回復させる破産管財人の権能のことをいいます。

以下では,詐害行為否認とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。

詐害行為否認とは?

破産管財人には「否認権」という権能が与えられています。

否認権とは,破産手続開始前になされた破産者の行為またはこれと同視できる第三者の行為の効力を否定して破産財団の回復を図る形成権たる破産管財人の権能のことをいいます。

この否認権には,2つの類型があります。「詐害行為否認」と「偏頗行為否認」の2類型です。

このうち,詐害行為否認とは,破産者による破産債権者を害する行為の効力を否定して,破産財団から流出した財産を破産財団に回復させるという否認権行使のことをいいます。

破産手続においては,破産債権者の利益を最大限確保しなければなりません。

それにもかかわらず,破産者が破産債権者を害する行為をして責任財産を減少させた場合,それを回復させる措置をとることができないとすれば,破産法の目的を達成できず,また破産手続への信頼を失わせることにもなりかねません。

そのため,そのような破産債権者を害する行為(詐害行為)の効力を否定して破産財団の回復を図ることができる詐害行為否認という権能が破産管財人に認められているのです。

>> 破産管財人の否認権とは?

詐害行為否認の類型

詐害行為否認には,以下のとおり,いくつかの類型があります。

  • 破産者が破産債権者を害することを知ってした破産債権者を害する行為の否認(破産法160条1項1号)
  • 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立てがあった後にした破産債権者を害する行為の否認(同項2号)
  • 詐害的債務消滅行為の否認(同条2項)
  • 無償行為の否認(同条3項)
  • 破産者が相当対価を得てした処分行為の否認(同法161条)

破産者が破産債権者を害することを知ってした破産債権者を害する行為の否認(破産法160条1項1号)

破産法 第160条第1項第1号

次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は,破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
① 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし,これによって利益を受けた者が,その行為の当時,破産債権者を害する事実を知らなかったときは,この限りでない。

詐害行為否認の類型の1つに,「破産者が破産債権者を害することを知ってした破産債権者を害する行為の否認(破産法160条1項1号)」があります。

破産債権者を害することを知りつつ,破産債権者を害する行為をしているというのですから,悪質性が大きいといえます。

そのため,この行為については,特に期間制限などもなく,否認権行使ができるものとされています。

否認権行使は,破産債権者を害することをして知った行為の相手方に対してされることになります。

ただし,この破産債権者を害することを知ってした行為の相手方(受益者)が,その行為当時,破産債権者を害するという事実を知らなかった場合には,否認権行使はできないとされています。

破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立てがあった後にした破産債権者を害する行為の否認(破産法160条1項2号)

破産法 第160条第1項第2号

次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は,破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
② 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし,これによって利益を受けた者が,その行為の当時,支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは,この限りでない。

詐害行為否認の類型の1つに,「破産者が支払停止または破産手続開始申立てがあった後にした破産債権者を害する行為の否認(破産法160条1項2号)」があります。

倒産法においては、すでに支払いが停止した以降は「危機時期」となり,これ以降はいってみれば倒産の準備期間であり,むやみに財産の処分をせずに,倒産に備えて,債権者に配当されるべき責任財産を確保しておくべきであると考えられています。

破産手続開始の申立てをした場合は,破産手続を開始することが支払停止以上に明らかですので,なおさら財産の処分等をすべきではありません。

そのため,支払停止や破産手続開始の申立て以降に破産債権者を害する行為をすることは,それ自体で,破産債権者を害することを知ってした場合と同視できるほどに悪質な行為であるといえます。

そこで,支払停止や破産手続開始の申立て以降の破産債権者を害する行為については,破産債権者を害することを知っていたかどうかを問わず,否認権行使の対象となるとしているのです。

ただし,この破産債権者を害することを知ってした行為の相手方(受益者)が,その行為当時,支払停止や破産手続開始の申立てがあったという事実を知らなかった場合には,否認権行使はできないとされています。

詐害的債務消滅行為の否認(破産法160条2項)

破産法 第160条第2項

破産者がした債務の消滅に関する行為であって,債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは,前項各号に掲げる要件のいずれかに該当するときは,破産手続開始後,その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分に限り,破産財団のために否認することができる。

詐害行為否認の類型の1つに,「詐害的債務消滅行為の否認(破産法160条2項)」があります。

詐害行為否認の対象となる行為には,通常「担保の供与又は債務の消滅に関する行為」は含まれません。

これらの行為は,詐害行為否認とは別の否認権類型である偏頗行為否認において否認権行使の対象とされているからです。

もっとも,債務消滅行為であっても,前記破産法160条1項各号にも該当し,かつ,消滅した債務よりも債権者が受けた利益の方が過大であるというような悪質な債務消滅行為については,偏頗行為否認だけでなく,詐害行為否認の対象にもなるとして否認権行使の幅を拡大し,破産財団を回復しやすくすべきです。

そこで,破産法160条2項は,上記のような債務消滅行為については,詐害的債務消滅行為として,詐害行為否認の対象としています。

ただし,詐害的債務消滅行為の否認の場合は,その債務消滅行為全部を否認できるわけではなく,債権者の受けた利益が消滅した債務よりも過大な部分だけ否認できるものとされています。

無償行為の否認(破産法160条3項)

破産法 第160条第3項

破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は,破産手続開始後,破産財団のために否認することができる。

詐害行為否認の類型の1つに,「無償行為の否認(破産法160条3項)」があります。

無償行為とは,要するに何らの対価もなく財産処分等をしてしまうということです。たとえば贈与が挙げられます。

何らの対価もなく財産処分等をしてしまうのですから,債務者の責任財産はただ減少するだけで,債権者に与える不利益は非常に大きいといえます。

そのため,無償行為(またはこれと同視できる有償行為)は,破産債権者を害する意思がなくても,否認権行使の対象とされています。

ただし,無償行為の相手方(受益者)の利益保護の観点から,無償行為否認の対象となるのは,支払停止の前6か月間以内の無償行為またはこれと同視できる有償行為に限られています。

破産者が相当対価を得てした処分行為の否認(破産法161条)

破産法 第161条第1項

破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において,その行為の相手方から相当の対価を取得しているときは,その行為は,次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り,破産手続開始後,破産財団のために否認することができる。
① 当該行為が,不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により,破産者において隠匿,無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下この条並びに第百六十八条第二項及び第三項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
② 破産者が,当該行為の当時,対価として取得した金銭その他の財産について,隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
③ 相手方が,当該行為の当時,破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

詐害行為否認の類型の1つに,「破産者が相当対価を得てした処分行為の否認(破産法161条)」があります。

相当の対価を得て財産を処分したのであれば,財産全体でみれば増減がないはずですから,原則としては破産債権者を害するとはいえず,否認権行使の対象とならないはずです。

もっとも,財産には,その性質によって,隠匿等をしやすいものとそうでないものがあります。

隠匿等をしにくい不動産などを,隠匿しやすい金銭に換えてしまうこと自体が,債権者に不利益を与える行為であるともいえます。

そこで,破産法161条は,相当対価を得てした処分行為であっても,不動産を金銭に換えてしまうような財産の変更によって破産債権者を害する処分をするおそれを現に生じさせるものについては,否認権行使の対象となることを定めているのです。

ただし,この相当対価を得てした処分行為の相手方(受益者)が,その行為の当時,破産者が隠匿等の行為をしようとしていることを知っていた場合に限り,否認権行使ができるとされています。

詐害行為否認の効果

破産管財人によって,詐害行為に対して否認権行使されると,当該詐害行為の効果が否定され,「破産財団を原状に復させる」ことになります(破産法167条1項)。

たとえば,破産者が所有不動産を廉価で親族に売却してしまった場合に,この不動産売却行為が詐害行為として否認されたとします。

そうすると,この不動産売却行為の法的効果は否定されます。否定されるというのは,買主である親族は,破産管財人に対して,その不動産所有権を売買契約に基づいて取得したことを対抗できなくなるということです。

その結果,破産管財人は,その不動産売買契約がなかったものとして,その不動産はいまだ破産者の有する財産であるとして扱うことができるようになります。

つまり,破産財団に属すべき財産として扱うことができるということです。

そして,破産財団に属すべき財産であると扱える以上,破産管財人は,上記親族に対して,その不動産を破産財団に戻すように請求することができるということになるのです。

>> 否認権が行使されるとどのような効果を生じるのか?

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