破産財団からの放棄とは?
破産財団からの放棄とは,破産管財人が,裁判所の許可を得て,破産財団に属する財産の管理処分権を放棄することをいいます(破産法78条2項12号)。法人破産・会社破産の場合,破産手続の開始により,破産者である法人・会社は清算の目的を達する範囲でのみ法人格を有するにすぎず,役員もその地位を失っているため,放棄された財産を管理処分することができません。そのため,法人破産・会社破産の場合には,破産財団からの放棄がされるのは,非常に例外的な場合に限られます。法人破産・会社破産において破産財団からの放棄がされた場合には,債権者など利害関係人の申立てによって清算人を選任し,その清算人が放棄された財産の管理・処分をすることになります。
以下では,破産財団からの放棄とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
破産財団からの放棄とは
破産法 第34条
第1項 破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は,破産財団とする。
第2項 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は,破産財団に属する。
<第3項以下省略>
破産法 第78条
第1項 破産手続開始の決定があった場合には,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は,裁判所が選任した破産管財人に専属する。
第2項 破産管財人が次に掲げる行為をするには,裁判所の許可を得なければならない。
⑫ 権利の放棄
<第2項①~⑪・⑬以下および第3項以下省略>
破産手続が開始されると,破産者である法人・会社が有していた一切の財産が破産財団に属するものとなります(破産法34条1項)。
破産財団に属する財産の管理処分権は,裁判所によって選任される破産管財人に専属します(破産法78条1項)。
そして,破産管財人は,管理処分権に基づき,破産財団に属する財産を換価処分して,それによって得た金銭を,破産管財業務の費用に充て,余剰があれば,各債権者に弁済または配当することになります。
とはいえ,すべての財産を換価処分できるとは限りません。そもそも換価価値が無い財産,換価価値があっても買い手がまったく見つからない財産もあります。
これら換価できない財産が物であれば,破産管財人が廃棄処分します。債権であれば,回収不能として処理することになるでしょう。
しかし,物の場合,廃棄するにも費用がかかります。廃棄処分の費用は,破産財団から捻出されますが,事案によっては,廃棄処分の費用を捻出できないこともあり得ます。
または,その財産を抱えているだけで,次々と管理コストが発生してしまい,仮に換価処分できたとしても,その管理コストを超えるほどの金銭を得られないことが見込まれるという場合もあります。
これらの場合,当該財産を破産財団に残しておいても,破産財団を増殖させるどころか,減少させてしまいます。それでは,債権者からしても,何のメリットもありません。
そこで,破産管財人は,裁判所の許可を得て,破産財団に属する財産に関する権利を放棄することができます(破産法78条2項12号)。これを「破産財団からの放棄」と呼んでいます。
>> 破産財団とは?
破産財団からの放棄の手続・効果
前記のとおり,破産管財人は,破産財団に属する財産を破産財団から放棄することができます。
ただし,破産管財人が破産財団からの放棄をするためには,事前に,裁判所の許可を得ておかなければなりません(破産法78条2項12号)。
破産財団から放棄された財産の管理処分権は,破産管財人から破産者へと戻されます。
法人破産・会社破産における破産財団からの放棄
前記のとおり,破産財団から放棄された財産の管理処分権は,破産者に戻されることになります。
個人の破産の場合であれば,破産財団から放棄された財産の管理処分権は,個人である破産者に戻され,その財産は自由財産として扱われるだけです。
しかし,法人破産・会社破産の場合,そう簡単にはいきません。
というのも,法人・会社が破産すると,その法人・会社は精算の目的の範囲内だけで存続していることになり,取締役などの役員もその地位を失ってしまうからです。
したがって,法人破産・会社破産の場合に破産財団からの放棄をすると,そもそも誰がその放棄された財産を管理すべきなのかという問題が生じる上,最悪の場合,その財産を誰も管理しなくなってしまうおそれがあります。
そのため,法人破産・会社破産の場合には,破産財団からの放棄はなされないのが通常です。
破産管財人は,換価価値のない財産であっても,代表者の親族や関係者などに廉価で売却するなどして,できる限り換価処分できるよう活動していかなければなりません。
とはいえ,破産財団からの放棄がまったくなされないというわけでもありません。
例外的に,破産財団から廃棄処分費用を捻出することが不可能である上に,換価どころか無償での譲渡相手もいないような場合には,破産財団からの放棄がなされることもあります。
ただし,その場合でも,破産管財人は,放棄された財産によって近隣に迷惑や悪影響を及ぼさないような措置をとった上で,破産財団からの放棄をすることが必要となってきます。
破産財団から放棄された財産の取扱い
前記のとおり,法人破産・会社破産の場合であっても,例外的に,破産財団からの放棄がされることもあります。
この場合,破産手続の開始により,法人・会社の法人格は,精算の目的の範囲内で存続しているにすぎず,また,役員もその地位を失っていますから,放棄された財産を,法人・会社や旧役員が管理することはできなくなっています。
しかし,放棄された財産を管理・処分しなければならない事態が生じることもあるでしょう。
その場合には,債権者等利害関係人の申立てによって清算人を選任し,その清算人が,放棄された財産を管理・処分することになるでしょう。
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