破産管財人の職務遂行はどのように監督されるのか?
裁判所には,破産管財人の職務執行を監督する権限・義務があります(破産法75条1項)。裁判所は事案の解決に適切な破産管財人を選任し(同法74条1項),破産管財人から報告を受け(同法157条等),重要な行為については許可を与え(同法78条等),または,不適切な行為をした破産管財人を解任する(同法75条2項)などして破産管財人の職務執行を監督します。また,破産債権者等利害関係人も,裁判所に破産管財人の行為について異議申立てや解任申立てなどをすることによって,間接的に破産管財人の職務執行を監督する役割を果たしています。
以下では,破産管財人の職務遂行はどのように監督されるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
破産管財人の職務執行に対する監督
破産手続は裁判手続ですが,実際に,破産手続における破産管財業務を遂行するのは,裁判所によって選任される破産管財人です。
破産管財業務は,内容的に多岐にわたる上,迅速性が求められます。そのため,破産管財人には,破産管財業務の遂行についてかなり広汎な裁量が認められています。
とはいえ,まったくの自由ではありません。当然,破産法の規定に従って職務執行がされなければなりません。
また,破産管財人に与えられている裁量は広汎であるため,不正の生じるおそれも大きいといえます。そこで,破産管財人の職務執行をある程度監督しておく必要性があります。
そこで,当該破産手続を主宰する裁判所は,破産管財人の職務執行を監督する権限と義務があるものとされています。
また,破産債権者や破産者等も,破産管財人の判断に異議を述べたり,解任を申し立てるなどして,裁判所による監督権の発動を促すことによって,破産管財人の職務執行を間接的に監督しているといえます。
>> 破産管財人とは?
裁判所による監督
破産法 第75条
第1項 破産管財人は,裁判所が監督する。
第2項 裁判所は,破産管財人が破産財団に属する財産の管理及び処分を適切に行っていないとき,その他重要な事由があるときは,利害関係人の申立てにより又は職権で,破産管財人を解任することができる。この場合においては,その破産管財人を審尋しなければならない。
裁判所は,破産管財人の職務執行を監督する権限を有していると同時に,破産管財人の職務執行を監督しなければならない義務を負っていると解されています(破産法75条1項)。
破産管財人は,破産手続開始決定と同時に,裁判所によって選任されますが(破産法31条1項,74条1項),その際,裁判所は,事件の内容に応じて適切な破産管財人を選任しなければなりません。
裁判所による監督の一環として,破産管財人は,破産手続開始後遅滞なく,破産法157条1項各号に定められた事項を記載した報告書を,裁判所に提出しなければならず(破産法157条1項),それ以外の場合でも,裁判所の要請があれば,適宜,破産財団に属する財産の管理および処分の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならない報告義務を負っています(破産法157条2項)。
裁判所は,これら破産管財人からの報告を受けることによって破産管財人の職務執行を監督し,違法または不適切な行為があれば,破産管財人に対して是正を求めることになります。
また,破産管財人が以下に掲げる一定の重大な行為をする場合には,裁判所による監督を直接及ぼすために,原則として,事前に,裁判所の許可を得なければならないとされています(破産法78条2項,3項)。
- 不動産に関する物権,登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却
- 鉱業権,漁業権,公共施設等運営権,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,回路配置利用権,育成者権,著作権又は著作隣接権の任意売却
- 営業又は事業の譲渡
- 商品の一括売却
- 借財
- 破産手続開始決定前に開始した相続について,破産者である相続人がした破産手続開始決定後における相続の放棄の承認
- 破産手続開始決定前に開始した相続について,破産者である包括受贈者がした破産手続開始決定後における包括遺贈の放棄の承認
- 破産手続開始決定前にされた特定遺贈について,破産者である特定括受贈者がした破産手続開始決定後における特定遺贈の放棄
- 100万円を超える動産の任意売却
- 100万円を超える債権又は有価証券の譲渡
- 100万円を超える双方未履行双務契約の履行の請求
- 100万円を超える訴えの提起
- 100万円を超える和解又は仲裁合意
- 100万円を超える権利の放棄
- 100万円を超える財団債権,取戻権又は別除権の承認
- 100万円を超える別除権の目的である財産の受戻し
- その他裁判所の指定する行為
さらに,裁判所による監督の一環として,破産管財人の報酬は裁判所が定めることになっています(破産法87条1項)。
裁判所による監督・是正命令等によっても破産管財人の職務執行が改善されず,破産管財人が破産財団に属する財産の管理処分を適切に行っていないとき,またはその他重要な事由があるときには,裁判所は,破産管財人を解任することができるとされています(破産法75条2項)。
破産債権者等による監督
前記のとおり,破産管財人の職務執行を監督する権限と責任を有しているのは裁判所です。
もっとも,裁判所が監督するとはいっても,破産管財人には多くの場面で自由裁量が認められている上,実際問題として,破産管財人の行為を逐一監督できるわけでもありません。
そのため,破産管財人自身の報告以外で裁判所が破産管財人の行為を監督するためには,実際に破産管財人と接触のある利害関係人からの上申や申立て等の情報提供が必要となってきます。
そこで,破産法は,利害関係人に対しても,間接的に破産管財人の行為を監督するための制度を設けています。
例えば,破産債権者や破産者は,破産管財人が提出した収支の計算等に対して異議を述べることができます(破産法88条4項,89条4項)。
また,破産債権者・破産者を含む利害関係人は,裁判所に対して,破産管財人の解任を求める申立てをすることができます(破産法75条2項)。
債権者委員会が設置されている場合には,その債権者委員会は,裁判所や破産管財人に対して意見を述べることができるとされています(破産法144条1項,145条2項)。
その他,法令で定められた申立てや意見陳述のほか,上申の形で,裁判所に対して破産管財人の不正行為等を報告する場合もあるでしょう。
これらの破産債権者等による申立てや意見陳述・報告を端緒として裁判所が破産管財人の行為を調査することにより,破産債権者等は間接的に破産管財人の職務執行を監督する役割を果たすことになるのです。
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