法人破産・会社破産した場合に代表者が個人再生できるか?
法人・会社の債務について連帯保証人になっているなどの理由から,代表者個人も債務の支払が困難になった場合には,法人破産・会社破産に伴って,債務整理をしなければならないことはあります。債務整理にはいくつかの方法がありますが,そのうちの1つに「個人再生(個人民事再生)」があります。法人破産・会社破産に伴って代表者が個人再生を行うこともあります。ただし,債務額が5000万円を超えないか,継続的・反復的で十分な収入の見込みはあるか,債権者の同意を得られるかなどが問題となってきます。
以下では,法人破産・会社破産した場合に代表者が個人再生できるか?について,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
法人破産・会社破産した場合の代表者の債務整理
法人・会社とその代表者個人とは,法的に別の人格ですから,法人・会社が破産したからと言って,代表者個人も破産などの債務整理をしなければならないわけではありません。
しかし,代表者が,法人・会社の債務について連帯保証人になっている場合,法人・会社が破産すると,代表者個人が,その債務の連帯保証人として支払わなければならなくなります。
また,法人・会社から代表者個人が借入れをしているような場合,法人・会社が破産すると,破産管財人から借入金を返済するよう求められます。
上記のような事情がなくても,法人・会社の経営のために,個人として借入れをしているような場合もあるでしょう。
これらの事情により,法人・会社の破産を契機として,代表者個人も支払いが困難になり,個人として債務整理をしなければならなくなることが少なくありません。
個人の債務整理の方法には,個人の自己破産などいくつかの方法があります。そのうちの1つに「個人再生(個人民事再生)」があります。
法人破産・会社破産と並行して行う代表者個人の債務整理としては,やはり自己破産が最も多いと思われますが,個人再生を行うこともあります。
>> 法人破産・会社破産における代表者や社長の立場や役割とは?
個人再生(個人民事再生)とは
個人再生(個人民事再生)とは,裁判所に債務の減額や分割払い等の条項を定めた再生計画を認可してもらうことによって,債務の整理を図ることができる裁判手続です。
法人・会社を想定して制定された民事再生手続を,個人でも利用しやすいように,手続を簡略化させたものが,この個人再生です。
個人再生が成功すると,債務額や持っている財産によって異なりますが,概ね5分の1から最大で10分の1まで債務を減額でき,その減額された債務を3年間から5年間の分割で支払っていくことになります。
この個人再生では,自己破産と異なり,財産を強制的に換価処分されることがないため,財産を有したまま債務の整理が可能となります。
また,住宅資金特別条項という特別な制度の利用が認められると,住宅ローンを従前どおり(または,若干変更して)支払いを継続することによって,住宅ローンの残っている自宅を維持したまま,住宅ローン以外の債務を個人再生によって整理することが可能です。
このように,個人再生は,代表者個人の債務整理としても有用な方法となりますが,要件が厳しいため,誰でも利用できる制度とは言えません。
>> 個人再生とは?
代表者が個人再生する場合の注意点
前記のとおり,個人再生は,代表者個人の債務整理としても有用な方法ですが,利用のための条件(要件)がかなり複雑かつ厳格です。
要件にはさまざまなものがありますが,法人破産・会社破産とともに代表者個人が個人再生をする場合に,特に問題となりやすいのは,以下の3点でしょう。
- 債務額が5000万円を超えていないか否か
- 継続的・反復的で十分な収入があるか否か
- 債権者の同意を得られるか否か
>> 個人再生の要件とは?
代表者個人の債務額が5000万円をこえていないか否か
個人再生は,再生債権額が5000万円を超えない場合に限り利用できるものとされています。これには,保証債務も含まれます。
そのため,法人・会社の連帯保証債務等が高額で,それと他の債務を併せると,代表者個人の債務額が5000万円を超えてしまう場合には,個人再生をすることができません。
なお,住宅資金特別条項を利用できる場合には,自宅の住宅ローンの額は5000万円の算定にはカウントされません。
>> 債務総額が5000万円を超えていても個人再生できるか?
代表者個人に継続的・反復的で十分な収入があるか否か
個人再生は,「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があり,かつ,その収入が「再生計画遂行の見込み」があるだけのものでなければなりません。
法人・会社が破産すると,その法人・会社は無くなりますから,代表者もその法人・会社からの収入を失います。
他にすでに就職しているなどして継続的な収入を得ていれば問題はありませんが,そうでない場合には,個人再生は利用できないということになります。
債権者の同意を得られるか否か
個人再生には,小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類の手続が設けられています。
このうち小規模個人再生の場合には,再生計画に同意するか反対(不同意)するかを債権者に問う決議が行われます。
この再生計画の決議において,債権者の頭数の半数以上が不同意とするか,または,不同意とした債権者の有する債権の合計額が総債権額の2分の1以上であった場合,個人再生の手続は廃止により打ち切られてしまいます。
金融機関や貸金業者であれば,不同意回答する業者はそれほどいませんが,そうでない公的機関や一般の取引先等の債権者は不同意とする可能性があります。
そのため,債権者の意向によっては,小規模個人再生をすることは難しい場合があります。
なお,すでに別の会社等に就職して給与収入を得ている場合には,給与所得者等再生が利用できないかどうかを検討することになるでしょう。
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