破産手続において別除権となる担保権とは?
破産手続においては,特別の先取特権,質権,抵当権,所有権留保,譲渡担保権等の担保権は,別除権として扱われることになります。
以下では,破産手続において別除権となるのはどの担保権なのかについて,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所がご説明いたします。
破産手続における別除権
破産法 第2条 第9項
この法律において「別除権」とは,破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき特別の先取特権,質権又は抵当権を有する者がこれらの権利の目的である財産について第65条第1項の規定により行使することができる権利をいう。
担保権が設定されている債権(被担保債権)は,その担保目的物から,他の債権者に優先して弁済等を受けることにより,債権の回収を図ることができるという優先的な地位を与えられています。
破産手続においても,担保権の優先的地位を認め,一定の担保権は「別除権」として扱われ,破産手続によらずに権利行使ができるものとされています(破産法2条9項,65条1項)。
この別除権となる担保権は,破産法2条9項によれば「特別の先取特権,質権又は抵当権」とされていますが,その他にも,商事留置権・譲渡担保権・所有権留保・仮登記担保等は別除権として扱われると解されています。
先取特権
先取特権とは,債務者の財産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利のことをいいます。この先取特権には,一般の先取特権と特別の先取特権があります。
一般の先取特権
一般の先取特権は,債務者の総財産に対する優先権であって,特定の財産に対する優先権ではありません。そのため,一般の先取特権は,破産手続における別除権とはなりません。
ただし,一般の先取特権は破産財団全体に対する優先権ではあります。したがって,別除権とはなりませんが,一般の先取特権がある債権については,優先的破産債権として扱われることになります。
特別の先取特権
特別の先取特権は,債務者の特定財産に対する優先権です。特別の先取特権は,別除権となります。
特別の先取特権としては,民法上,動産先取特権・不動産先取特権があります。これらは,別除権として扱われることになります。
また,建物の区分所有権に関する法律7条により,マンションの滞納管理費請求権には特別の先取特権が認められていますので,これも別除権となります。
質権
質権とは,債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を占有し,かつ,その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のことをいいます。
たとえば,質屋です。
質屋は,顧客から一定の物を預かる代わりに金銭を貸しつけますが,その貸金の返済がなされない場合には,その物を自分の物として債権に充当することができます。これは質権を設定しているということです。
この質権は,破産手続において別除権となります。
抵当権
抵当権とは,債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について,他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利のことをいいます。
たとえば,不動産を購入する際に住宅ローンを組むことがありますが,この住宅ローンを組む際に,その購入不動産に抵当権が設定されます。
そして,住宅ローン会社は,ローン返済がなされなかった場合には,その不動産を競売にかけるなどして売却し,その売却代金から優先的にローンの残高に充当することができます。
この抵当権も,破産手続において別除権となります。
留置権
留置権とは,他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有するときに,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる権利のことをいいます。留置権には民法上の留置権と商事留置権があります。
民法上の留置権は,債権が弁済されるまでその物を留置することはできますが,それを取得したり,売却するなどして優先的に弁済を受けることができる効力までは有していません。そのため,別除権とはなりません。
他方,商事留置権は,特別の先取特権とみなされています。そのため,商事留置権は別除権となります。
譲渡担保権
譲渡担保とは,債権担保のために,債務者または第三者が所有する財産の所有権を設定者から譲渡担保権者に移転させ,被担保債権が弁済された場合にはその財産の所有権を設定者に復帰させ,債務不履行があった場合には,その財産の所有権を譲渡担保権者に帰属させ,その価額と債務残高の清算を行うか,または,譲渡担保権者がその財産を処分して清算を行うという形式の担保形態のことをいいます。
この譲渡担保は,形式上,所有権移転の形をとっていますが,その実質は担保権です。そのため,譲渡担保権者の有する権利は,所有権者としての取戻権ではなく,担保権者としての別除権であると解されています(最一小判昭和41年4月28日・民集20巻4号900頁)。
したがって,譲渡担保権も別除権となります。
所有権留保
所有権留保とは,売買契約において,売買代金の完済前に売主が買主に目的物を引き渡しつつも,その所有権は売買代金完済まで売主に留保し,この留保所有権をもって,売買代金の担保とするという担保形態のことをいいます。
この所有権留保は,形式上,所有権は売主側に留保される形をとっていますが,その実質は担保権です。そのため,留保所有権者の有する権利は,所有権者としての取戻権ではなく,担保権者としての別除権であると解されています(最二小判平成22年6月4日・民集64巻4号1107頁)。
したがって,所有権留保における留保所有権も別除権となります。
仮登記担保
仮登記担保とは,債務の担保のために,債務者または第三者の所有する不動産等について,債務不履行を停止条件とする代物弁済予約または停止条件付代物弁済契約を締結して,その契約による権利につき仮登記または仮登録を行うという担保形態のことをいいます(仮登記担保契約に関する法律1条)。
仮登記担保契約に関する法律19条1項によれば,「破産財団に属する土地等についてされている担保仮登記の権利者については、破産法中破産財団に属する財産につき抵当権を有する者に関する規定を適用する。」とされています。
したがって,仮登記担保権者の権利は,抵当権と同様,別除権となります。
>> 破産手続において仮登記担保権はどのように扱われるのか?
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